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2018.01.17

『消滅世界』

1月17日(水曜日)
『消滅世界(村田沙耶香 著)』/河出書房新社
 半年以上前からの“積ん読”を、今さらながらやっと消化。いつもの読書感想文同様(といってもかなり久々!)、全くの独断と偏見に充ち満ちた内容になっています。
 そして、
 <ネタバレ注意!!>この小説をまだ読んでいない方は、今日のBlog内容は読まないでください。

===
 この小説の読後感。インパクトは小さくないが、後味は悪い。
 しかし、一部の湊かなえ作品のように、最後に「救われた感」が皆無であり(個人的には最悪の部類)どうしようもない(読まなければ良かった)としか思えないかと言えば、この作品はそこまででもない。
 確かに最後「救われた感」は無いのだが、読んだことが全く無駄だったとまでは言えないかな、と。

 それは何か。
 本の帯にも記載されている「実験的思考」(設定)。進行する物語の中で、「ではそもそも○○は何だっけ?」と現実世界の過去・現在・未来に照らして考えさせられる部分があったりするところだ。
 
 ○○に入る言葉は、「恋愛」、「セックス」、「家族」、「出産」であったり「子育て」だったりする。

 全体を通して突っ込みどころは随所にある。
 例えば、
 未来世界、或いは異次元世界なのか?における突拍子も無い設定の中で、登場人物の『羞恥心』に関する記載がない。ストーリーを進行させる上では実は大切な論点なのに、それが都合良く置き去りにされているなど、つじつま合わせが弱く、物語としての総合的なまとまり感に欠ける。

 また、具体的なところでは、
 主人公の女性が「恋人」の男性から、別れ話を切り出される場面。その理由が 「今でも深く愛してはいるし、嫌いになったわけではない。ただ、いつ切りだそうか悩んでいたのだが、逢瀬のたびに君に『挿入』を求められることが本当は辛かったのだ。申し訳ないが、もう耐えられそうも無い。」
 (そもそも、物語の設定上、毎回の「行為」の前に両者はそれぞれのスマホの画像等情報等を用い、それぞれの身体を「行為」が可能な準備状態になるように持っていかなければならない、というところから相当無理な部分はあるのだが)

 作者が女性だから男性の本質や生態を知らないのは無理も無いところではあるが、仮に男がそんな風なことを思い始めたら何をどうしたって「挿入可能な準備状態」に持って行くのはまず不可能。メンタリティに深く依存するところだから。その状態で「いつ切りだそうか」などという状況がしばらく続くのはあり得ないと言っていい。・・・と個人的には考える。
 (まあ、全てが「あり得ない」で成り立っている小説だから、セーフと言えばセーフなのだが・・・)

 そんな部分も併せて、つじつま合わせが弱い、と感じたところではある。
 全く個人的な思いを語れば、非現実ワールドなら、それはそれでその世界の中でのつじつまは合っていてほしい。
 或いはその状況が「こっちの世界」と違うというのであればその部分の説明がどこかでされていて、こっちを納得させた上でそのワールドを成立させていてほしい。
 
 小説の残り2割程度のところで、「終わり方」を自分なりに何通りか想像し、組み立てていたのだが、どれも外れた。そのどれよりも後味がよろしくない方向性だったことに、当てられなかったことよりむしろガッカリさせられた。残念。

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