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2016.09.23

『約束の海』 

9月23日(金曜日)夜中から通して午後まで雨 
 9時、自家用車のエアバック(助手席側)リコール交換のためディーラーへ。
 折角夏季休暇を取らせてもらっているのだが結構な雨でもありrunにも出ず。割り切って、読書の一日と決めた。

 

『約束の海(著:山崎豊子)』 〔新潮文庫〕

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 山崎豊子の絶筆作品。白い巨塔、大地の子、沈まぬ太陽といった壮大な長編作品で国内第一人者としての不動の地位を築いた作者。
 今回もそれに匹敵する或いは上回る大きな作品になるはずだった。長く緻密に行われる取材や構成のプロットも概ね終わっていた。しかし、作品の一つ一つ文字通り身を削って送り出していた山崎氏は第一巻を書き終え、旅立ってしまった。

 今回のテーマは潜水艦と民間遊漁船の衝突という海難事故で前例のない死者を出した「なだしお事件」をモチーフとし、自衛隊とは、国防とは、戦争とは、マスコミ報道とは・・・。 自衛隊の潜水艦乗りの若者を主人公として彼と、真珠湾での辛い捕虜1号として生き地獄を送ってきた彼の父の人生を軸に、今、我々が真剣に対峙しなくてはならないタイムリーで深刻なテーマを掘り下げ、展開する。

 自分としても、国防、外交そして憲法に関しては譲れない強い思いがあるところだが、個々の問題はともかく それぞれを関連付けて説明しなければならないとき、まだ自己の中でスッキリと整理し切れていない部分があるのは自覚している。

 今回の作品は、竹島、尖閣諸島、南沙諸島等への進攻問題や自衛隊の立ち位置、軍備の在り方等々今日本国民の誰もが悶々としていながら、向き合いたい、しかし作家としては小説としてはなかなか切り込みづらい分野へ反戦への思いを己の根幹としている立場である作者がズバズバと切り込み一定の答えを出す・・・・予定だった。

 これまでの作品を読む中で、努力家で論理的で一人の人間としても尊敬する彼女の強い心に根差す想いは、反戦にしろ、反体制にしろ自分のポリシーとこの上なく合致するところであり、今回のテーマについても彼女としての最終解答がどういう形で表現されるのか、極めて興味深いことであった。
 それだけに、これほど悔やまれる小説家の死は自分にとって かつてない。

 小説第1巻の最後で、スタッフが、山崎氏の残した幾通りかのプロットを紹介しているのだが、これを読むと尚更、じくじたる思いが募るのを禁じ得ない。

 それにしても、素晴らしい作家をまた失ったものだ。あらためて、偉大な日本の小説家、山崎豊子さんのご冥福を心よりお祈りいたします。

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