« 労組活動で12時間! | トップページ | いつもと変わんないっしょ »

2010.03.08

体験。『海炭市叙景』

3月8日(月曜日)

P3075611

  函館市出身の 故 佐藤泰志氏の小説で18編からなる物語で構成されるという。実は恥ずかしながらまだ読んでいないためストーリーは全く未知。この小説を市民が自分達で映画化しようと立ち上がり、帯広出身の熊切和嘉氏を監督として動き出した。らしい・・;;
 舞台は海炭市という架空の街。昭和後期(くらいかな?)の時代設定。この街は函館がモチーフとなっている。

 この映画のエキストラ要員としてお声が掛かり、何も判らないまま、ただ、興味だけが先行して自前の作業服、ドカ ジャン、長靴。軍手着用で「えい、やあっ!」と飛び込んでみた。

P3075607 現場は函館市浅野町の現役の古ぼけた工場、その、道路に面した敷地内(門の前)と屋内の労働者詰め所的スペース。
 天気はいいが、とにかく冷える1日だった。寒さがなければ最高だったが、この苦しみがあったからこそ終わった後の充実感もひとしおなのかとも思う。

001

 今回は大きく3つのシーンを撮ることになっていた(らしい・・;;終わってみて初めて知った・・)海炭市叙景の物語やうんちくを知らないのでそちらの情報は関連サイトに譲るとして、今回は純粋に体験談を。

 そもそも、基本的に1つのシーンを撮るためには、「練習」、カメラ回して「テスト」、「本番」の3工程がワンセットとなっているようだ。

007

練習」はたいてい2~3回繰り返して終わる。
テスト」はカメラ、照明、音声、小道具(屋外では残雪の状態も)などの調整が都度入り、そのたびにテスト→機器等環境調整を繰り返すので、平気で10~20分の待ち時間を挟みながら4~5回繰り返す。
本番」は役者のNGもあるし、役者やエキストラの微妙な位置取りや表情・セリフのニュアンスなど監督が納得するまで数テイク。

さて、3つのシーンとは
P3075609

100307_2

(1)会社建物門前でのシュプレヒコール
   海炭ドック労組員が不当解雇へ断固立ち向かう。会社へ向かっての心の叫び。ここはその他大勢の一人として旗を掲げながらリーダーの後についてセリフを復唱
(1)’それを屋内の窓から苦々しく見つめる会社首脳
   同じシーンを角度を変えて。2階の窓から見ている会社側の首脳の一人として、自分も立場変えて参加
(2)シュプレヒコール後、颯太(主役)が会社へ何処からか戻ってくる
   コールを終えて解散していく組合員。そのあとを颯太が会社門から入り地面に散乱した闘争ビラを拾ってじっと見つめる
(3)室内。労組幹部が会社側の解雇条件を飲み、それを組合員へ説明
   
納得いかぬ組合員の怒号が渦巻く中、一人ゆっくりと前へ進み出て、低く一言交わしたあと10秒ほどの間。突然幹部へ殴りかかろうとする颯太。それを数人で必死に止める・・

P3075604

P3075605

 午前、若干の(3)室内練習のあと、ロケ弁昼食を頂く。その後14時頃から(1)の屋外撮りが始まったが、すでに気温は相当下がっていて、とにかく待ち時間が辛い・・。どんどん辛くなってゆく。その間、ひたすら真剣にシュプレヒコールのセリフを叫ぶ。自分の職場が無くなるのだ。必死にならずにいられない!

P3075612

 引き続き(2)のシーン。テスト後、颯太の歩く道端の雪が不足しているということで、シャベルと一輪車等でひたすら雪運び。それを挟んで、さらにカメラ位置なども変えて数テイク。シュプレヒコールを終えて解散し、ぞろぞろと職場へ戻る演技を何回繰り返したことか・・・。16時頃、やっとOK。今日の屋外シーン完了。

さらに。(3)の場合。

P3075613

P3075614

 屋内で部屋の照明セットや組合旗などの小物配置、ストーブなど既設施設の撤去等で相当な時間がかかり、そろそろいいかなと思うと「外が日暮れるまで待ちになります」と・・。また待ち。18時頃、予期せぬ夜のロケ弁が提供され、わ~まだまだかかるんだ~と知る・・・。暗くなる中、工場の大広間?で牛丼弁当の食事していると「18時35分から撮影入りま~す!」と。

P3075619

P3075620

 さて時間。撮影部屋に集合して位置についてからも、素人には判らない機器調整が続き、結局19時近くに撮影開始。
 ところが、(3)では1シーンを5つのカットで撮影するという。
つまり、同じ演技について、1台のカメラ位置を5回変えて撮るわけだから、さらに上記3工程の5倍となる。
 カメラ位置を変えるだけでも都度備品のテーブルを撤去・再設置したり、カメラを載せる移動用レールを組み立て・解体したりと10~30分のインターバルが平気で発生する。

100307_2_2

 その都度、組合幹部へ罵声を浴びせる。会社人事部の提示した「希望退職者募集要綱」のチラシ(左写真)を手に、最初はぶつぶつ小声でのグダめきから、一人の組合員のセリフ「執行部が会社から待遇を保証されてるって噂聞いたんだけどよ」。ザワザワそして怒りの勢いは増し、大声で「どういうことだ~!説明しろよ!!執行部~!!」と全員で畳みかける。その段階的なテンションの違いを、体に染みこませ、カットごとにきちんと再現しなくてはならないのだ。

 かくして、完全に完了したのは、21時34分。ほぼきっかり今日の集合時間から12時間経っていた。

 長い長い作業が続くだけに、1シーンが終わる毎に自然に拍手がわき起こる。
  「はい、本番行きます!!
で空気が張り詰め、気が引き締まる。ついに来たなって感じ。一発でOKが出るなんて誰も思ってはいない。でも
  「はい、OK!!
で一安心する。しかし、このあと、カメラさんや監督が撮影された映像をチェックする。ここで問題なければいいが、レンズの埃などで
  「もう一回 お願いしま~す!
となったこともある。ここで
P3075621  「はい、OKです!
これで初めて全員、開放感・達成感・充実感に満たされ笑顔が爆発し、拍手が自然にわき起こる。

(3)の5カット目のこの瞬間は、まさに今回の函館ロケの最終場面だけあって、泣きそうなくらいみなさん感動してた。幸福に満ちあふれていた。

P3075622

P3075623

 このことを体験できただけでも、今回のエキストラに乗っかった価値があるというもの。
 これほど長かった撮影でも、今日のシーンはそれぞれ3~5分程度で編集されるものと勝手に思っている。もっと短いかもなぁ。
 映像に自分の姿が映っていようとはよもや考えてもいないが、こういう形で「海炭市叙景」の撮影に関われたこと、心から感謝したいし、誇りに思います。

P30756242

 ちなみに、スタッフの方に聞いた情報では
(3)のシーンは、映画のタイトルが出る前、物語の前振りとなる最も重要なシーンだとのこと。多分、颯太が職を失う場面だからなんだろうな。この映像が流れたあとでタイトルがバーンとでるパターンのやつらしい。

どこまでの範囲で公開になるのか知りませんが、機会があれば是非

最後に関連サイトのご紹介。
海炭市叙景オフィシャルサイト
映画「海炭市叙景」上映までの足跡(スタッフBlog?)
谷村美月サポートウェブログ
配給元のスローラーナーBlog

↑配給元のBlogに東京から函館の撮影に参加したキャストの紹介があったので転載します。
「まだ若い廃墟」井川颯太@竹原ピストル、井川帆波@谷村美月、副島@黒沼弘己、進行役@石井洋輔
「ネコを抱いた婆さん」工藤まこと@山中崇、
「黒い森」比嘉隆三@小林薫、比嘉春代@南果歩
「裂けた爪」牛島晴夫@加瀬亮、マスター@あがた森魚、笹川@大森立嗣、千恵子@伊藤裕子
「裸足」萩谷博@三浦誠己、リンダ@森谷文子、スーツの男@村上淳

 この他、エキストラではない台詞のある多数の役は皆、函館のオーディションで選ばれた地元の皆さんが演じているとのこと。

 自分は室内の(3)シーンで、持ち場のテーブルで一緒になった方がいます。監督を目指しているという大阪芸大在学中の中川さんというスタッフサポート。一生懸命、各場面のセットやカメラの配置なんかを細かくノートに書き込んで勉強してました。将来映画監督になるのを期待して注目しています!と約束しました

          * * *

去年の3月8日 高野寺納骨堂でお骨納め

|

« 労組活動で12時間! | トップページ | いつもと変わんないっしょ »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 体験。『海炭市叙景』:

« 労組活動で12時間! | トップページ | いつもと変わんないっしょ »