« 最高気温記録=海水浴! | トップページ | 雨の墓参り »

2009.08.12

『天空の蜂』ネタバレ注意

8月12日(水曜日) 
 珍しく、核心的、決定的なネタバレ内容です。まだ読んでいない方は、決してこの記事を読み進んではなりませぬ!

Photo_3   『天空の蜂』(東野圭吾著 講談社文庫)
 夏休みの前半はこれで退屈を紛らわしてました。刊行時(1995年11月、もう14年前に書かれた小説!)の帯に「驚愕のクライシス・サスペンス」とあったと解説の中にありましたが、まさに言い得ています。
 こんなタイプの物語も書ける東野氏はやはり凄い。
 土地勘が疎いため、舞台となった福井県若狭湾の原発銀座のあたり、Google EarthやWeb MAPなどで確認しながら読んでました。(これほどここに原発が集中してるとは!)

Photo_5   この物語は大型ヘリコプター墜落により「新陽」原発を破壊する!という形で、一個の原発を人質に取り全国の全ての原発破壊を政府に求めるという設定の中で9割方が進行します。
 
 展開する人間ドラマのなか、大きなポイントは「子供」。

 (「もんじゅ」の空撮写真) 
Photo_6 原発開発に従事する技術者の息子が事故死した経緯、 事故死と思われたそれは、息子の遺品を整理する中で、クラスのイジメが原因の自殺ではなかったかと気づきます。ある反原発運動の主導者の息子が中心となったクラス内でのイジメの痕跡が確認されたのです。その真相は明らかにはされません。しかし。

 私自身が原発肯定派か否定派かは別として
★必要不可欠なインフラなのに、時には厄介者扱いされ、建設反対運動まで起きる。
★必要不可欠であるということが議論できる知識も興味もない者達が、世論や雰囲気に扇動され、声高に反対を叫ぶ。或いは反対の意思を持つ。


 そういったシーンが自分の深く関わる『道路事業』と極めて良く似ているにも関わらず、自分は我が子供達のイジメについて一ミリも考えたことがあったか・・・ということに気づかされました。ノートや教科書に「税金ドロボー」なんて書かれていないか、確認しなければならないかな、なんて真剣に考えてしまいました

 犯人は、子供のイジメがあった無かったは別としても、そういう疑いがもたれる行動をする方される方、息子の死、それによる自分の家庭崩壊と精神的苦痛(これが一番大きい)、そしてイジメの首謀者の親もまた匿名の誰かから強烈な嫌がらせを日常受け、ノイローゼで家庭崩壊となっていること、これら全てが実は「犠牲者」ではなかったかと思い至ります。

 何の犠牲者か。それは「世間の原子力発電への無関心」です。「無知」と言ってもいいかも知れない。全ての悲痛な「崩壊」をもたらした「世間の無関心」に、一石を投じなければ犠牲者は浮かばれない。それが犯行の動機となっているのです。

 交渉に応じたと見せかけた政府の卑劣な手段に気づきつつも、偶然ヘリコプターに乗り込んでしまった子供を助けることを犯人が黙認したのも、「我が子への愛情」が動機の大きな部分となっていることの裏付けでしょう。

          * * *

 自分も「無関心な世間」の一人であったことをあたらめて気づかされもしました。
 そんな原発初心者の原発入門書としても実に有効に活用できる小説ではないかと思います。少なくとも、原発の何たるかをある程度知らないままで、賛成も反対も意見できる訳がない。それを思い知らされました。それだけでも貴重な体験になったと考えています。分厚い小説でしたが、読んだ甲斐がありました。

          * * *

Photo_7  1995年12月8日、刊行直後にまさにこの物語の舞台となった原子力発電所「新陽」のモデルである高速増殖原型炉「もんじゅ」がナトリウム漏洩事故を起こし、ナトリウム火災が発生したのは単なる偶然でしょうか。この物語の中でも、関係者がヘリ墜落の影響を議論する中で最も危機的な状況としてナトリウム火災の発生が想定されるという場面があるのですが・・・あまりにもタイムリー過ぎて恐いくらい。東野氏の眼力、やはり侮れません。

          * * *

去年の8月12日 日本柔道 

|

« 最高気温記録=海水浴! | トップページ | 雨の墓参り »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 『天空の蜂』ネタバレ注意:

« 最高気温記録=海水浴! | トップページ | 雨の墓参り »