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2006.02.10

もののあはれ

4106101416  今回の出張、帰りのJRで読んだ「国家の品格」(藤原正彦/新潮新書)という本。
何といいましょうか、読んでいる間、ずっと”片えくぼ”的な笑いを押し殺しているという状態でした。

 少し大げさに言えば、論旨が、世の中や人生に対する自分の基本的な考えに、限りなく近いものだったからです。
 完読して、100%とはいかないまでも、98%くらいは同調できる内容でした。極短く表現すると、日本人に失われつつある「もののあはれ」と「武士道」の精神を取り戻すことこそ、日本を、そして世界を救う道なのだ!というものです。

 もしも、自分にこの著者ほどの切れ味鋭い洞察力と豊富な教養があったなら、これとほぼ同じ内容の本を書いていただろう と思えるくらい、考え方の座標軸が酷似しているのです。

 いつもぐだぐだとこのBLOGで細切れに書いていることは、時には矛盾しているように見えても、全て基本的な「自分の立ち位置」に照らして思うことなので、本当に言いたいことを体系的に集約すれば、この本の内容になってしまうのかな、と感じられました。
 だからこのこの本の中で登場するキーワード的言葉がこのBLOGの中でしばしば語られる言葉だったりもします。

  例えば「論理は破綻する」の項でその理由として「A→B→C→Dと完璧な構成で組み立てられる論理も出発点であるAは必ず仮説であり、情緒的な個人の総合力」とするところは、私の「立場の論理」に通じます。 「民主主義における民衆は成熟していなければならないが、民衆は決して成熟することはない」というところは、以前藤井聡助教授の論文を例示して述べた「大衆の不確実さ」と同じことを言っています。まだまだ他にもたくさん・・。

 自分の場合は文章表現力が拙いため、世の中の趨勢が「もののあはれ」や「武士道精神」から反した方向に走り出している傾向にあることに対して、時事的な例をあげつらいながら、直接的な指摘や反論をすることよりも、「俺の考えに反しているなら反しているで、何でおまえらはそのスタンスに一貫性が無いのだ」というひねくれた表現をしていることが多かと思います。
 そのことで暗に「おまえらは実はそのスタンスに疑問を感じているのではないのか?」と非難し、自分の考えの正当性を示唆していたんだ、ということにも気づかされました。

 この本では、つい先日ここで話題にした日本標準時時計の精度が億分の1秒上がること(世界レベルの物理技術が日本人によって進歩すること)の意義とそれが大切な理由を(一般化されてはいましたが)実に明快に解説していて、ああ、そうだったのか、と納得させてくれもしました。

 また、これは余談ですが、自分にとってゆかりの深い平家物語「敦盛の最後」の例示の中で、”私の名前”が登場したり(本書100頁)、「比較的貧しいにも関わらず”普遍的価値”を重んじるイギリスという国家が世界から何故一目置かれるか」の例示のくだりでは我が敬愛するThe Beatlesの名前も出てきます(本書131頁)。本論とは無関係に、それが妙に嬉しかったり。

 著者の気風から、少し端的な物言いが多く、誤解されやすいこともあるかも知れません。でも私には訴えたいことが染み入るように伝わってきます。
 このBLOGのトータル的論調にしばしば同意することがある貴方。この本は必読書です。是非、是非、読んでいただきたいと思います。
 逆に、違うんじゃないか、と思うことが多い貴方は、この本を読まないほうがいかも知れません。かなりの反感を抱くはずです。

          * * *

 こうして得ることもあれば、失うものもある。それが人生でしょうか。
 今回の出張で、デジタルオーディオプレイヤーを無くしてしまいました。コートの胸ポケットに入れていて、腕に持って移動したときどこかで落としたらしい。
 これは悲しい出来事でした。音楽がそばにないと落ち着かない自分にとっては非常にきつい。代わりのマシンを探すエネルギー、購入資金を調達するエネルギー、その大きさによる心身への負荷を考えるだけで頭が痛いです。

          * * *

 去年の2月10日。シリーズ「日本語の使い方」3。最近見られる”すごいおいしい”的な「形容詞を連用修飾に用いる場合」の誤用への違和感。方言のファッション化について思うことなど。
 自分の ときに偏執的でさえある日本語使用法へのこだわりもやはり、「もののあはれ」を感じ、愛でる心情が根幹にあればこそなのかな と感じる今日この頃。

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